ジュース屋
よく行く果物ジュース屋の旦那が交通事故で亡くなってしばらく経つ。まだ40だった。子どもも3人いた。ひらがなを教えてくれ、と随分前に言われ、ひらがな練習帳を日本で買ってきた矢先に、彼の死を知った。今日、奥が住居になっているそのジュース屋の前を通ると、奥さんが、「またお店開けるからね、働かないといけないからね」とガッツポーズで、でもか弱な声で話しかけてきたので、「うん、他で売っているジュースは(砂糖が大量に入っていて)甘すぎるから、ここのジュースが恋しかったんだ」と言うと、「そう、ここのジュースは一番だから!」と言い、いつものように、「座っていきなさい」とイスを差し出してくれた。ついこの間、お墓で、亡くなった旦那さんのがっちりと筋肉のついた身体を撫でるように、墓石の彼の名前を細い指でなぞって、肩を震わせ泣いていた彼女を思い出し、涙腺が緩んできた。また来るから、と言って、通り過ぎた。
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